生産者のこだわり

株式会社堀井七茗園

堀井長太郎さん

宇治抹茶の老舗が手間かかる作業にこだわる理由「お客様の笑顔が見たいから」

明治時代・1879年創業145年の歴史を持つ京都宇治抹茶の老舗をご存じだろうか。
「堀井七茗園」京都・宇治で創業以来、茶園栽培から製造販売まで行っている数少ない店である。
六代目園主の堀井長太郎さん(73)は「美味しいお茶が摘み取れるのは新茶が始まりたった3日間。
50年以上もこの道にいますが、いまだに摘む日を見極めるには苦心します」と語る。

店舗前にあるのれんと堀井さん

抹茶は石臼で1時間に40g程度しか挽けません。
手間と時間がかかっているからこそ、
伝統の味をお客様に届けられます

JR宇治駅から歩いて約7分のところ、縣神社の門前に堀井七茗園は店を構える。店頭には抹茶を始め、30種類を超える様々な茶葉が紙袋に梱包され販売されている。観光で訪れた方を始め、メディアで当園を知られたお茶好きな方が店を訪れる。

茶園の写真

堀井七茗園は茶葉販売を行う店舗の他、茶園や製造工場、敷地内には加工場、抹茶工場を所有しており、文字通り一貫して抹茶製造販売を行ってきた。

六代目園主の堀井長太郎さんは「室町時代から続く名茶園を所有しており、毎年一番茶のみを手摘みで摘み取っています」と語る。

「毎年5月の初め、お茶摘みが始まります。旬の美味しいお茶が摘めるのは3日間だけ、摘むのが早ければまろやかさに欠け、遅ければ葉が大きくなり、味が薄くなります。その年ごとに気象条件が異なるので葉の色や新芽の大きさで摘む日を判断しますが、その見極めが今でも一番重要です」

それだけではない。その後の製茶にも多くの工程がある。「お茶はとても繊細で、小さなことでも味が変わってしまうことが多いのです」と、堀井さんは話す。

「摘まれた新芽は、その日のうちに製茶に入ります。茶の良し悪しは『蒸し』で決まると言われ、新芽を蒸す作業がその品質を大きく左右するので気が抜けません。最良の蒸しを判断するのは最終的には自分の『鼻』です。蒸した時の香りを自らの臭覚で確認することで良い茶が出来るのです」

石臼の写真

「製造された碾茶は抹茶の原料となり、当園ではそれらの碾茶を段階ごとに分け、すべて石臼で抹茶に挽きます。80台の石臼がありますが一台につき1時間当たり40g程しか挽けません。粉砕機を使う企業もある中、私達は石臼ならではの香りと、細やかな仕上がりにこだわっています」

これまで堀井七茗園は茶の品評会で通算12回の第一位「農林水産大臣賞」を受賞している。品質の表れである。

「お茶の審査には浸出したお湯の色も判断材料となります。玉露や碾茶の場合あまり浸出した湯に色がつかず、覆い香と言う濃い香りを持つもの。煎茶は新鮮な香りと共に山吹色に近い澄んだ色を持つものが良品です」

お茶を注いでいる様子

海外からも「オンラインで買って感動して訪れました」

店舗だけでなくオンラインショップでの販売も行い、海外からの購入も増えている。アメリカ、東南アジア、欧州とそれこそ世界各地から、ほんまもんの抹茶を求め購入者が増えている。

「海外の一部ではお茶は健康食品としても人気があり『MATCHA』(まっちゃ)は世界共通語となりました。訪日外国人が増えてきた今日、『オンラインで求めた抹茶の味に感動し、宇治の店に訪れた』と言われることもあり、お客様からの『美味しい』の声が一番嬉しく、励みになります。伝統をつなぎ、期待に応えるお茶づくりをこれからも続けます」

堀井さん

ただ一方で、お茶の消費量は年々減少傾向にある。農林水産省が公表している「作物統計」によると、1980年に10万トン以上あった国内の主産県における茶生産量は、2022年には7万トンを下回っている。また、製造光熱費や肥料の高騰により、茶生産者には負担が増える。

「色々な人にお茶への興味、関心を持ってもらえるよう、私たちも新しい取り組みを展開しております。こだわりの抹茶を使ったスイーツをはじめ、洋酒のジンの原料に茶葉を使用したり、様々な分野でお茶とのコラボレーションが生み出されています。ザ・リッツ・カールトン京都のバーではお茶と競演したカクテルも提供されました。これらはお茶が持つ新しい魅力を感じてほしいからです。茶飲料に押され厳しい業界ですが、美味しいお茶を届け、お客様に笑顔になってもらえる喜びがあるからこそ、お茶づくりを頑張れます」

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宇治銘茶2種詰合せの写真

宇治銘茶2種詰合せ

室町時代から続く宇治七茗園を今も守り続ける堀井七茗園園主が選び抜いたこれぞ宇治茶と誇れる一品です。