生産者のこだわり

小山自慢株式会社

村田玲子さん

忙しい専業主婦が寝る間を惜しんでも「豚」を売るワケ

子ども3人を育てる専業主婦が、地元名産物の一つである豚肉を全国に広めようと奮闘している。
小山自慢株式会社を経営する村田玲子さん(38)。村田さんは「子どもが誇れる地元になるように」と語る。
村田さんの活動内容や事業にかける思いを聞いた。

村田さんの写真

地元の良さって長年住んでいる人たちもまだ分からない部分があって。そんな眠っている地元のいいところ、意外な名産物をアピールしていきたいんです

東京から新幹線で40分ほど。栃木県小山市は栃木県の南部に位置する都市だ。人口は16万人超と同県で二番目に大きい。

小山自慢株式会社は2021年4月に設立。それまでは2年間、村田さんは個人事業主として事業を行ってきた。同社は小山市のブランド豚「おとん」と伝統工芸品の結城紬(つむぎ)を使った商品開発を手がけている。従業員として現在、パートの主婦3人が勤めているという。

なぜブランド豚「おとん」を使った事業を展開しようと考えたのか。その理由を村田さんが語る。

村田さんとおとっぺセットの写真

「スーパーでたまたま、『おとん』のバラ肉を手に取ったのがきっかけ。味に大差はないと思ったものの、ほかの豚肉より甘く感動してしまったのです。けれども、『おとん』のことは近隣住民にすらほとんど知られていない現状があって...」

村田さんは栃木県旧岩舟町(現栃木市)生まれ。小中高時代は栃木県で過ごし、大学入学と同時に東京へ上京した。卒業後は塾講師などの職を経て、2018年に栃木県小山市へ移住してきた。

小山市の名産品といえば、栃木県が全国9割超のシェアを誇るかんぴょうのほか、和牛や豚などがあるが、その実態は多くの人には知られていない。

移住してきて感じたことは「小山市には代名詞的なものがない」と村田さんは語る。「おとん」と出会ったときのことを、「せっかく美味しいのに、もっとPRしなければもったいないと思った」と打ち明ける。

「とはいえ、三児の母。もちろん夫から反対されました。でも私も、子どもには誇れる地元であってほしくて。そんな思いを伝え、一度失敗したら諦めることを条件に事業をスタートしました。最初に考えたのは、これだけ美味しい豚肉があるのに加工品が市内で一つも作られていないこと。だから私がソーセージなどを作り、販売したら地域に貢献できるかなと思いました」

おとっぺセットの写真

村田さんは育児も手を抜くことがなく、分刻みで時間を調整しているという。洗濯物を畳みながら、事業のアイデアを考えることもしばしば。それだけではなく、空いた時間には加工品の生産をしてくれる工場へ、飛び込み営業をしてきた。

「子どもをおんぶしながら営業していた時もあります。もちろん、嫌な顔をいっぱいされましたよ。子連れのうえに、肩書もない。工場にはとにかく、『必ず売るんで作ってください』とお願いしてきました。ただ、向こうも在庫を抱えたくはなく、断わられた回数は数え切れません」

初出店で大成功 「もっと売って!」の声多数

ようやく受注してくれる工場が見つかり、2019年11月に行われた熱気球のイベント「おやまバルーンフェスタ」でホットドッグにして売り出した。600本が完売。周囲から「美味しい!どこで買えるの?」との声が届いたという。

村田さんの写真

「これをきっかけに、事業拡大を本格的に考えました。スーパーや道の駅といった実店舗での販売のほか、ネットショップでの購入も可能にしたいと考え、あれこれ模索しました。とにかく足を使い、店舗様へは飛び込み営業を何度も繰り返しました。また、自社製品の知名度向上のため、子どもが寝静まったあとに近くのマンションにポスティングへ行くこともあります」

これだけではなく、従業員を雇うことも考え、市が図書館などで開催している経営塾に参加したりなど、「とにかく奔走しました」と村田さん。ちょうどその頃、新型コロナの感染拡大に直面した。ギフト商品に手書きの手紙を添えるなど、ネットショップでの売り方などを徹底研究したという。

「おやまといえば『おとん』だよね、といつかは言われたい。『おとん』をきっかけに観光客が増え、小山の魅力をもっともっと知ってもらいたいと常に感じています。子どもたちがこれから大人になるまでにもっと誇れる地元にできればと。大変な時はもちろんありますが、そのためならどんな苦しいことも乗り越えられます」

村田さんは2022年5月、社会に好循環を起こすなど“傑出した若者”を顕彰するコンテスト「JCI JAPAN TOYP」(主催・日本青年会議所)で会頭特別賞を受賞。同コンテストでの入賞は市内で初めてで、県内唯一の受賞者にもなった。

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おとっぺセットの写真

ご当地BBQ大会全国優勝
おとっぺセット

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